2026-05-01から1ヶ月間の記事一覧
そのニュースを読んだとき、僕は少しだけ妙な気分になった。 プロ野球の監督が、自宅で娘に手を上げ、そのままシーズン途中で辞任に追い込まれたという記事だった。 華やかな場所にいるはずの人間が、ある一瞬を境に、すべてを失ってしまう。その落差は、た…
僕は最近、自分が以前よりも少しだけ、切れやすくなったのではないか、と考えることがある。 たとえば、コンビニで列の順番を守らない人を見かけたとき。あるいは、メールの件名を見ただけで要件が、さっぱり分からない文面を受け取ったとき。 昔の僕なら、…
ミニPCが一年でつぶれた。最近は「安くて高性能」と話題になっているし、YouTubeでもやたらとおすすめ動画が流れてくる。けれど、実際に自分の財布からお金を出して買ってみると、宣伝の熱気とはずいぶん温度差があるものだ。 会社で使っているHP製のミニPC…
先日、友人の住んでいる町の近くで道路が陥没したという話を、 電話で聞いた。昼下がり、僕は台所に立っていて、 やかんに水を入れたまま火をつけたのかどうか、 そのあたりがすでにはっきりしなかった。 鍋はそこにあったが、水が沸く音はしていなかった。 …
大阪の最低賃金が、上がったらしい。 ニュースでその数字を見たとき、 僕はちょうど、 朝の味噌汁を温めているところだった。 ふわりと立ちのぼる湯気の向こう。 テレビ画面に浮かぶ「時給1177円」という文字。 なんだか現実感があるような、ないような。 そ…
連休のあいだ、僕はほとんど家にいた。 外に出たのは、近所のスーパーへ行ったときだけだ。 午後の店内は、休日にしては妙に静かだった。音が少ないというより、 最初から音という概念が存在しない場所へ迷い込んだようだった。 整然と並ぶ棚のあいだを歩く…
静かな決別 仕事を辞めようと思ったのは、特別な出来事があったからではない。 ただ、ある日ふと、定年を迎えたときに笑っている自分が、どうしても想像できなかった。 その瞬間、胸の奥で小さな棘のようなものが引っかかった。 すぐに消えたが、あとに残っ…
第三話 撮られなかった一枚 引っ越しの荷造りをしていると、 段ボールの底から一冊のアルバムが出てきた。 床に座り、表紙の埃を払って開く。 遠足、運動会、夏休み。 どれも覚えているが、色は少し褪せている。 写真の中の私はいつも笑っていて、誰かの隣に…
第二話 埋まる前の席 昼休みになると、俺は競馬新聞を広げる。赤ペンで印をつけ、 オッズを眺めていると、騒がしい頭の中が少し静かになる。 「今日は勝てる気がします」 それが俺の口癖だった。 先輩はいつも「ギャンブルで家は建たないぞ」と言う。 怒るわ…